腹壁ヘルニア

お腹に「こぶ」があり、それが徐々に大きくなっているというワンちゃんが来院しました。見てみると、お腹のちょうど真ん中あたりに5cmほどの膨らみがあります。触ってみると脂肪のようですが少し固くもあります。話を聞くと、小さいころに避妊手術をした後くらいから大きくなってきたとのことです。

全身麻酔をかけて確認したところ、皮膚の下の皮下組織にこぶがありました。

こぶの周りを剥していくと、腹筋に小さな穴が開いており、そこから飛び出しているのが分かりました。腹筋に穴が開いて、お腹の中のものが飛び出す「腹壁ヘルニア」という状態です。幸い飛び出ていたものは脂肪のみなので、それを切除し、腹筋を縫い合わせて手術は終了しました。

腹壁ヘルニアは先天的に生じるものもあれば、後天的に外傷や、避妊手術の合併症で起きる場合もあります。今回のワンちゃんの場合、その原因の特定は難しかったですが、飛び出していたものが脂肪のみで、なおかつ症状が無いうちに手術できたことは幸いでした。

飛び出したものが腸であれば食物の通過が阻害されて急激な症状が出ます。また脂肪であった場合でも、飛び出し方が良くないと血行が阻害されて、強い痛みを引き起こすこともあります。

お腹がポコッと腫れており、それが徐々に大きくなる様な時は、早めの診察をお勧めします。