胆嚢粘液嚢腫①

胆嚢という臓器はご存知でしょうか?

胆嚢という名前は聞いたことはあるけれど、具体的にどこにあって、どんな働きをしているか分からないという方が多いかと思います。

胆嚢は肝臓に隣接した臓器で、肝臓で作られた胆汁という消化液を一時的に貯留する袋です。食物が体の中に入ってくると、胆嚢に蓄えられた胆汁が腸に出され、それが脂肪の消化に役立っています。

さて、ワンちゃんでその胆嚢に問題が起こる「胆嚢粘液嚢腫」という疾患があります。胆嚢粘液嚢腫と言われても、どんなものかイマイチ想像し難いかと思いますが、胆嚢周囲が厚くなり、胆嚢の中身が変性した物質で満たされパンパンになってしまうという病態です。それにより胆嚢に炎症が起きたり、場合によっては胆嚢が破裂してしまうということもあります。

胆嚢粘液嚢腫はどちらかというと、高齢で10歳前後の小型~中型のワンちゃんによく見られる疾患ですが、その原因ははっきりしていません。甲状腺や副腎から出されるホルモンの分泌異常、高脂血症などが関連していることがあると言われていますが、それらの基礎疾患が無くても生じるケースもあります。

胆嚢粘液嚢腫になった場合、すぐに何か症状が出るというわけではありません。そのため、健康診断をしていたところ偶発的に胆嚢粘液嚢腫が見つかるという事もあります。

ただ病状が進行してくると、食欲不振や元気消失、嘔吐などの症状が出始めます。そして、もし胆嚢が破裂してしまい、中身が腹腔内に漏れ出すと、激しい腹膜炎を起こして命に関わることもあります。

診断は超音波検査がメインの役割を果たします。正常な胆嚢は、サラサラの胆汁が蓄えられており超音波では黒く見えます。一方、胆嚢粘液嚢腫の場合は下の写真のように胆嚢周囲が黒く見えて、中心部が白く見えます。さらに進行した症例では、いわゆる「キウイフルーツ」を輪切りにしたような画像で見えます。

進行していれば診断は比較的つけやすい疾患ですが、問題となるのは治療の方です。治療の話は次回させて頂きます。