鼠径ヘルニア

「鼠径ヘルニア」という病気をご存知でしょうか?

鼠径ヘルニアとは、足の付け根の鼠径部というところにある穴から、お腹の中の臓器が体外に飛び出して症状を引き起こす疾患です。どのワンちゃんも鼠径部には血管が通る穴が生まれつき開いていますが、その穴が大きくなってしまったものが鼠径ヘルニアです。

鼠径ヘルニアがまだ小さい時には、お腹の中から飛び出してくるものは脂肪であることが多く、脂肪の場合には症状を引き起こすことは滅多にありません。ただし脂肪以外の小腸や膀胱、子宮などの臓器が飛び出してしまうと、それに伴って症状がみられるようになります。

例えば小腸が飛び出してしまうと、小腸の内容物が流れなくなってしまう腸閉塞を引き起こします。膀胱が飛び出した場合には排尿不全となり、尿毒症や膀胱破裂を引き起こします。これらのいずれもそのまま放置されると命に関わることになります。

そのため症状が出てしまった(または、症状が出そうな)鼠径ヘルニアは、手術を検討する必要があります。手術の方法は、飛び出している臓器をお腹の中に戻して鼠径部の穴を縫い縮めるというものです。先ほどお話した通り、血管が通る穴が大きくなったものが鼠径ヘルニアであるため、その穴を完全に塞いでしまうと血管も通れなくなり問題を生じます。そのため穴は完全に塞がないで、血管の通るスペースを残して縫い縮めます。

下の写真は鼠径ヘルニアで子宮が飛び出したワンちゃんの手術の写真です。手術前の写真を撮っていなかったためにイメージしづらいと思うのですが、膨らんでいるものが鼠径ヘルニアです。

下が鼠径ヘルニアを開けた写真です。ピンク色のものが子宮で、白いポコポコしたものは脂肪です。これらがお腹の中から飛び出していました。

 

このワンちゃんの場合は子宮に膿が貯まる子宮蓄膿症という病気を併発していたため、子宮が大きくなり穴から戻らなくなってしまいました。そのため子宮を摘出して、同時に鼠径ヘルニアを塞ぐ手術を行いました。

 

鼠径ヘルニアについて心配されている方は、ご相談下さい。