レッグペルテス

ブログ2月担当の獣医師の吉田です。私は昨年に引き続き、実際に来院された症例についてご紹介したいと思います。

2カ月くらい前から右後肢を痛がり、完全に挙上して歩いているという約1歳のトイ・プードルが来院されました。特にアクシデントがあったわけではないのですが、院内でも確かに右後肢は完全挙上していました。実際に触診してみると、右後肢の筋肉は萎縮して足が細くなっており、股関節を動かすと強い痛みを感じているようでした。

このことから股関節周囲に慢性的に痛みを与えるような何かが隠れていると疑い、レントゲンを撮ってみると、大腿骨頭と呼ばれる股関節を形成している部分に不透過性(骨の白さ)の左右差があり、骨の辺縁もやや不正になっていました(赤丸)

結論をいうと、このトイ・プードルさんの跛行の原因は大腿骨頭壊死症(レッグペルテス)というものでした。大腿骨頭への血液供給がうまくいかず、骨の壊死や変形が生じる病気ですが、原因はよく分かっていません。小型犬の若齢で発症することが多いことから遺伝的な要因が関与しているのではないかと考えられています。一度発症してしまうと安静や鎮痛剤といった内科的治療に対する反応は鈍く、多くの症例では跛行の改善に外科治療が必要になります。今回のプードルさんも筋肉の萎縮があり、慢性的な跛行が認められたため外科手術を行うこととなりました。

今回の症例では大腿骨頭切除術という術式を用いました。これは壊死してしまっている大腿骨頭そのものを切除し、股関節における接触をなくすことで不快感や痛みを軽減し、股関節の機能回復を目的としています。術後は骨盤と後肢の骨が完全に離れた状態になります。大丈夫かなと心配になりますが、痛みのコントロールをしながら股関節の屈伸運動によるリハビリや意識的に手術した足を使うことにより時間はかかりますが、多くの症例でしっかりとした歩行が可能になります。このトイ・プードルさんもこれからしっかりとリハビリをしていき、違和感や痛みのない歩行を目指していくことになります。

この病気は予防法もなく、特に原因に心当たりがなく発症します。とくにケガしたわけではないけど、迎え入れた子犬さんの歩き方が変などの症状がある方は相談してみて下さい。