獣医師のお仕事①【診察編】

 

10月ブログ担当、獣医師の草開です。以前、看護師のお仕事をブログにて説明しましたが、今回からは獣医師編になります。

実際に獣医師が行っている普段の診察や、検査、手術などの具体的な内容や、どういった事に意識しているのかなど説明していきます。第1回は飼い主様と関わることが多い【診察編】です。

まず、患者様が来院されるとどういった主訴で本日来院されたか、看護師が問診致します。そこで聞いた情報をもとに事前に出来る準備を行い(予防接種であればワクチンの準備、点滴であれば点滴セットの準備、呼吸が苦しそうな子であれば酸素室の準備など)、また診察に入る前までに、性別、年齢、性格、予防歴の有無、今までどういった治療を行っているのか、アレルギーの反応など過去に出たことがあるかなど事前に情報を把握した上で診察に入ります。

診察が始まったらまず行うのが体重測定です。ワンちゃんでいう体重1キロの増加は人で例えたら5~10キロ増えていることになるので、体重が大きく変動している場合には食生活を改めるなど注意が必要です。自分の子がどれくらい痩せているか太っているかよく分からない場合、院内の待合室に分かりやすい指標がありますのでぜひご活用ください。

また、食べているにも関わらずどんどん痩せていく場合には、慢性的な疾患やホルモン性の病気、腫瘍等が隠れている可能性もある事を意識しながら次の触診に移ります。

まず実際に体を触ってみて体温に異常がある場合は体温を測定します。顔周りでは肝臓を悪くすると目の白目の部分で黄色く黄疸が出てくることがあるのでそれが出ていないか、歯石の沈着や歯肉炎の程度、また口の粘膜の色や渇きを見て貧血や循環状態を評価し、背中の皮膚をつまみ戻り具合で脱水の評価が出来ます。続いて体表リンパ節の触知を行います。ワンちゃんねこちゃんの触れる体表リンパ節は5カ所あり極端に腫れているところがないか、腫瘍のような出来物が出来ていないか全身触っていきます。

食欲が落ちていたり、お腹の調子が悪い子にはお腹も注意深く触っていき、触って過剰に痛がる様子がないか、お腹に水が溜まっていないか、明らかな異常構造物がないか、尿の溜まり具合等を触って確認していきます。

子犬さん子猫さんでは、乳歯の生え変わりの観察、男の子の場合しっかり精巣が二つ降りてきているかチェックも大切です。

全身の触診が終わったら次は聴診です。心臓の雑音の有無や、心拍数の異常、リズムに乱れがないか確認していきます。特に10歳を超えたワンちゃんの2~3割に心臓に雑音がでてくるといわれていますので、聞き逃しのないよう注意深く聴取します。それと同時に呼吸様式も一緒に観察していきます。病院ですとどうしても緊張して呼吸の回数が多くなりがちですが、肺の音と照らし合わせたり、お家での呼吸の様子を聞きながら異常がないか確認していきます。

これら体重の増減、体温、心拍数、呼吸数、触診・聴診から得た所見、飼い主様から得た情報をもとに総合的に評価し、更に詳しく検査が必要な場合は検査へと進み診断に至ります。人間と違ってワンちゃんネコちゃんはどこが不調なのか話すことが出来ないので、飼い主様からの情報が治療へ向けて大変重要になってきます。

些細なことでも気になる様子がありましたらご遠慮なくお申し付けください。

今回は実際に我々獣医師がこういったところを意識しながら普段の診察を行っているというのをほんの一部分ではありますが文章にさせていただきました。次回は【検査編】です。