僧帽弁閉鎖不全症①

 

ワンちゃんの病気の中でも怖いのが心疾患です。特に弁膜症の一つである、「僧帽弁閉鎖不全症」という病気は、中高齢の小型のワンちゃんで多くみられ、初期症状に気付かず急に肺水腫という呼吸困難状態に陥り、その日のうちに亡くなってしまうという事もあるくらいの恐ろしい病気です。そのため初期症状を見逃さず治療を開始するということがとても重要になります。

では、その初期症状とはどういうものでしょうか?

一番多い症状は疲れやすくなるという事です。「以前は散歩中に止まってしまうなんてことは無かったのに、ここ最近はすぐに疲れて止まってしまうようになった」というような症状です。ただし、この病気自体が年と共に起こりやすくなるため、その症状が単に加齢によるものなのか、僧帽弁閉鎖不全症によるものなのか、それとも関節などの他の病気からなのか判断が難しいところもあると思います。

また、咳が多くなるという症状もありますが、こちらは必発ではありません。僧帽弁閉鎖不全症が進行して肺水腫になると湿った咳をまず伴いますが、肺水腫でない状態の僧帽弁閉鎖不全症だけでは、咳を伴う事もあれば伴わないこともあります。

それ以外の症状としては心雑音があり、僧帽弁閉鎖不全症ならば初期からほぼ100%心雑音を伴うため、僧帽弁閉鎖不全症を早期発見するには、心雑音を確認するのが最善の方法です。ただし心雑音も重度になると心臓のあたりの胸に手を触れることにより、心雑音による振動を感じることができますが、中程度以下のものでは病院で聴診しなければ分かりません。ワクチンなどで来院された場合でも無料で聴診は可能ですので、心配な方は遠慮なく言って下さい。次回は僧帽弁閉鎖不全症の検査の話になります。