胆嚢粘液嚢腫②

今回は胆嚢粘液嚢腫の治療の話です。

治療法は大きく内科治療と外科治療に分けられますが、どちらを選択するかは判断が難しいところです。

まず基礎疾患としてホルモン疾患や高脂血症がある場合には、それらの基礎疾患を治療することにより、胆嚢粘液嚢腫が消失することもあります。また、利胆剤という胆汁分泌を増やす薬を用いることにより、胆嚢粘液嚢腫が消失することもあります。ただし、それらの治療の有効性は、いずれも「消失することがある」という程度です。内科治療に反応せずに、胆嚢粘液嚢腫が残ってしまうケースがほとんどです。

では外科治療はどうでしょうか?

まず手術方法の話ですが、貯まってしまった胆嚢の中身をきれいに取り除いて元に戻すというやり方はできません。そのため、手術方法は問題の起こっている胆嚢を丸ごと摘出するということになります。「胆嚢を摘出してしまって、体に悪影響は無いの?」と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、胆嚢は摘出してしまっても、問題の無い臓器です。そのため胆嚢粘液嚢腫の手術には胆嚢摘出が通常行われます。

ただし、手術を行う場合に問題となるのがそのリスクです。データによって違うのですが、胆嚢粘液嚢腫の手術時の死亡率は数%~40%と言われています。

これは手術をした状況によっても変わりますが、例えば…

①胆嚢粘液嚢腫が健康診断で見つかり、今後の事を考えて万全の体調の時に手術する

②胆嚢粘液嚢腫から胆嚢炎、胆嚢破裂が起こってしまい状態が悪い中で緊急手術を行う

当然、①の状況で手術を行った方が死亡率は低くなります。早期発見することができて、②に移行する前に手術を行うのが理想です。

では①の状況であれば死亡することはほとんどないかというと、決してそうではないというところが、この胆嚢粘液嚢腫の厄介なところです。①の状況で手術を行ったとしても、死亡する症例や、術後に胆嚢周りの炎症がくすぶってしまうこともあります。

それでも胆嚢粘液嚢腫をそのままにしておくと、いずれ破裂を招くため、手術が推奨されているというのが現状の専門医の見解です。胆嚢粘液嚢腫は、なかなか難儀な疾患なのです…