腎臓腫瘍①

ここ最近、尿に血が混じっているという9歳のワンちゃんが来院しました。

血尿で来院されるワンちゃんで一番多い疾患は膀胱炎ですが、膀胱炎の際には血尿だけでなく、排尿の回数が増える頻尿もよくみられます。ただし、このワンちゃんには頻尿の症状はありませんでした。

そのため超音波で膀胱だけではなく腎臓も確認したところ、左の腎臓に2~3cmほどのしこりが見つかりました。見た目は腎臓の腫瘍の疑いが高そうであり、その場合には手術による腎臓摘出が治療の第一選択となりますが、すぐに手術を行うというわけにはいきません。

腎臓は尿毒素の排出や電解質の調整など大事な役割を果たしています。腎臓は左右に1つずつあるため、片側の腎臓を摘出したとしても反対側の腎臓が機能していれば問題ありません。ただし反対側の腎臓が実は機能していないとなると、せっかく手術を行ったけれど、術後腎不全になり命の危険性に晒されます。

そのためレントゲンで写る造影剤を体に注入して、それが腎臓から排泄されるか、つまり腎臓が機能しているかを確かめる排泄性尿路造影検査を手術前に行いました。

こちらが造影剤を注入した後のレントゲンになります。

左右にある楕円形の臓器が腎臓(黄丸)で、そこから造影剤が尿管(下方に向かう細長い線)を流れているのが確認できました。血液検査でも腎臓の数値は高くなく、腎機能が維持されていることが分かったため、これで手術を行うことができます。

さて、手術に関しては次回お話しします。