変性性脊髄症②

今回は変性性脊髄症の続きの話になります。

まず診断です。コーギーで多く、ゆっくりと進行する麻痺であり、かつ痛みが無いという特徴的な所見から、変性性脊髄症という事をある程度推測することができます。ただし確定診断は難しく、現在のところ死亡した後に病理解剖を行うことによってしか確定診断を下すことができません。

そのため一般的には除外診断をしていくということになり、レントゲン検査やMRI検査にて他の病気では無いことを確認していきます。また、SOD1遺伝子に変異があるかを調べることができるため、それが診断の手助けになります。

治療法に関しては、残念ながら今のところこの病気を治す、または進行を止めたり遅らせたりする治療薬はありません。「ニューロアクト」というサプリメントが進行を遅らせる可能性があるので、それを使うという事になります。

そして最も大事なことが、この病気を持っているワンちゃんの管理です。足がもつれてしまうからと言って、散歩をしなくなってしまうと、神経が機能を失うのが早くなってしまうため、後肢が使えるうちは積極的な散歩をお勧めします。ただし、後肢を引きずって歩くようになってしまうため、ワンちゃん用の靴や靴下で足先を保護してあげるのがよいでしょう。

後肢が使えなくなってからも前肢の機能はしばらく維持できるため、車いすを使った散歩をするようにしましょう。車いすはインターネットなどで注文することができます。

そして、前肢の異常が出てくる頃から、排便排尿が自力でできなくなってきます。便や尿が、腸や膀胱に貯まって一杯になると、体の向きを変えた時などに溢れ出てくるというわけです。膀胱が常に尿で満たされている状況なので、細菌感染が起こりやすく、難治性の膀胱炎になる事が多いです。可能であればお腹を押しての圧迫排尿をするとよいでしょう。

いよいよ前肢での起立が困難になると、寝たきりとなってしまいます。寝たきりになると褥瘡(床ずれ)ができやすくなります。低反発マットやビーズクッションのような素材を下に引いて管理して、可能であれば2~3時間毎の体位変換をお勧めします。さらに、呼吸を支配する筋肉も徐々に弱っていきますので、暑い環境では熱中症になるリスクもあるため、特に夏は注意が必要です。

変性脊髄症はこのような経過を辿って亡くなってしまう病気であり、現状では治すことはできません。ただしおよそ3年という経過があるため、病気と向き合って生活する時間的猶予もあるかと思います。

変性性脊髄症でお困りの方はご相談を頂けたらと思います。