肛門嚢の疾患①

「肛門嚢」をご存知でしょうか?

「肛門腺」や「臭腺」と言われたりもしますが、肛門の両脇の皮膚の下にある袋の事です。そこでは嫌な臭いのする分泌液が作られており、お腹に力が入るとその圧力によって、肛門の横の小さな穴から分泌液が出てきます。

ワンちゃんが興奮した後や、便をした後などにお尻周りから嫌な臭いがするという経験をされた方もいるかもしれないですが、それはおそらく肛門嚢から出てきた分泌液の臭いかと思われます。

そんな肛門嚢ですが、時には分泌液が貯まりすぎて問題を引き起こすことがあります。若い時の分泌液はサラサラとしているため、お腹に力が入るとすぐに出てきて、問題を引き起こすことは多くありません。ただし加齢と共にサラサラだった分泌液が砂状になってくると、圧力がかかっても出てこなくなってしまう場合があります。分泌液を自力で出すことができなくなると、そこに炎症が生じて肛門嚢内がパンパンになってしまいます。そして最終的には破裂して、皮膚を突き破って血や膿が出てくるという事になります。

「ここ最近、お尻をしきりに気にしている様子があったけど、今日見てみたらお尻の周りが血だらけになっている」、ということで来院されるワンちゃん、ネコちゃんは多いです。

こちらが破裂直後の肛門嚢です。黄色矢印が肛門で、その横の赤丸が肛門嚢の炎症により破れた皮膚です。

 

こちらは破裂後1週間の写真です。まだ炎症は残りますが、皮膚が再生されて治ってきているのが分かります。

こちらの写真の子は、この1週間後に皮膚は元通りにはなりました。ただし1度破裂をしてしまった子は同じことを繰り返さないように、定期的に人の手によって肛門嚢を絞ってあげる必要があります。

さて炎症だけではなく、ワンちゃんでは肛門嚢に腫瘍ができることも比較的多いです。そのお話は次回させて頂きます。