扁平上皮癌①

背中の皮膚にしこり状の皮膚炎が以前からあって、なかなか治らないというワンちゃんが来院しました。他院で皮膚炎と言われていましたが、出血を繰り返してしており、徐々に臭いもきつくなってきたという事です。

しこりには痂皮(かさぶたのこと)が付いて盛り上がっていましたが、痂皮を剥がすとその下は潰瘍化していました。しこりに針を刺したところ、「扁平上皮癌」という悪性腫瘍の可能性が考えられました。

皮膚にできる扁平上皮癌は、一見皮膚炎のような見た目ですが、内服や外用によって治ることはありません。局所でゆっくりと大きくなっていきますが、比較的転移はしにくいという特徴があります。レントゲンを撮影したところ、やはり肺野に明らかな転移は見つからなかったため、手術で摘出することにしました。

下の写真が手術前の様子です。皮膚が盛り上がっており、その表面が潰瘍化しているのが分かるかと思います。

扁平上皮癌は見た目よりも癌細胞が周囲に大きく広がっていることが多いため、手術では周囲の皮膚に余白を十分もって切除し、深部に対しても皮膚や皮下組織だけでなく、筋膜および筋肉1枚も剥がして切除しました。切除後の写真は以下です。

そして摘出したしこりを病理検査に送りましたが、診断結果はやはり扁平上皮癌でした。ただし筋肉にまで腫瘍細胞が浸潤している像がみられたため、再発に注意して経過観察が必要ということでした。

扁平上皮癌は体の様々な部位に発生します。次回も別の部位に発生した扁平上皮癌をご紹介したいと思います。