水晶体脱臼②

今回は水晶体前方脱臼の治療についての話です。

水晶体前方脱臼になると、眼圧が上昇し緑内障となり失明するリスクがあるため、治療が必要となります。ただし、治療の選択肢が多くあるため、その時の眼や全身の状態を考慮して、治療法を選択する必要があります。

 

①水晶体摘出術

理想的な治療方法は、手術にて水晶体を直接取り出すという方法です。特に視覚がまだ残っている場合には、視覚の温存のために最善の選択になります。ただし、眼科専門病院でしかできない治療法となります。

 

②物理的に押し込む

水晶体は、下図のように後方に脱臼している場合には問題が起きることは多くありません。そのため、前方に脱臼している水晶体を外から押し込んで、眼球の後方に落とし込むというやり方があります。眼球後方にスペースが無いと押し込むことはできないため、全ての症例で可能というわけではありませんが、後方に押し込むことができれば合併症の発生率を大きく低下させることができます。ただし、まだ水晶体自体は残っているため、再び前方脱臼する可能性は残ります。

③温存療法

②の方法で水晶体を後方に落とし込むことができない場合には、前方に脱臼していながら問題が起こらないように対応していくという事になります。具体的には瞳孔を広げる点眼と、眼房水の生成を抑える点眼を併用して、眼圧が上昇しないようにコントロールするという事です。うまくいけばこれで眼圧のコントロールは可能ですが、いつ再び眼圧が上昇するか分からないリスクは抱えていくことになります。

 

④眼球摘出

視覚が無く、眼球への合併症が強く生じており、眼球の温存が困難な場合には眼球摘出を行う事もあります。

 

水晶体前方脱臼の治療方法は以上のように様々な方法があり、症例ごとに状況が違うため、それに合わせて決めていくことなります。頻繁にある病気ではありませんが、起こってしまうと容易に視覚を喪失する可能性があります。目をショボショボしているようなことがあれば早目の来院をお勧めします。