鼻腺癌①

鼻の通りが悪く、いびきの様な音がするようになり、それと共に食欲が落ちているという13歳のネコちゃんが来院しました。診察時もいびきのような異常音がはっきりとあり、おそらく気道(空気の通り道)が狭くなっているものと考えられました。

もともと肥満傾向のネコちゃんなので、単純な脂肪の付きすぎにより気道が狭くなっている可能性も否定できません。ただ、今までそのような異常音がすることはなかったということなので、何か病的な要因が隠れている可能性が高そうです。まずは一時的な炎症を疑って内服薬を処方しましたが、症状に変化が無かったため内視鏡検査で気道の確認をする事になりました。

全身麻酔下で内視鏡を口から入れて、まずは喉まわりを確認しましたが、特に大きな異常はありませんでした。そこで下の図のように内視鏡を反転させて鼻の裏側を見たところ(青矢印)、ポリープ状のもの(赤丸)があり、それが気道を塞いでいました。

 

ポリープが気道を塞いでいるのは分かりましたが、そのポリープが何であるかは内視鏡で見ただけでは分からないため、その一部を切りとって、病理検査に提出したところ「腺癌」という診断でした。

「腺癌」とはあまり聞きなれない言葉だと思いますが、ネコちゃんで時々見られる鼻腔内の腫瘍です。癌という名前の通りに悪性腫瘍ですが、この腫瘍は転移をすることは多くありません。ただし局所で大きくなっていくために、やがて気道を完全に塞いでしまったり(口呼吸はできるけど鼻呼吸ができない状態になったり)、脳の方に広がっていくと痙攣発作などの神経症状が出てくる可能性があります。

癌といえば手術で摘出というイメージがあると思いますが、残念ながら鼻の腺癌は手術で摘出しきれませんので、それ以外の治療法を選択するという事になります。

さて、治療については次回お話させて頂きます。