鼻腺癌②

鼻の腺癌が見つかったネコちゃんのお話の続きです。

鼻の腺癌に対しての治療方法ですが、手術は基本的に適応外となります。また確実に効く抗癌剤というものはありません。最も効果のある治療は放射線治療となりますが、ネコちゃんに放射線治療を行うには、なかなか高いハードルがあるのが現実です。

まず、放射線治療を行う装置が当院も含めた一般の動物病院には無いため、大学病院や二次診療施設を受診して頂く必要があります。また、放射線をピンポイントで癌に照射する必要があるため、ネコちゃんが動かないように全身麻酔をかけて行わなければいけません。プロトコールにもよりますが、週1~3回遠くの病院に通ってもらい全身麻酔をかけて放射線治療を行うという生活を数週間続ける必要があります。

今回のネコちゃんはそれでも放射線治療を希望されたため、大学病院にて週1回、計6回の放射線照射を行ったところ、いびきのような気道閉塞音が無くなり、快適な生活を送れるようになりました。

ただし、それで完治したという事ではなく、癌は小さくなったけれどまだ残っています。「それなら癌が完全に無くなるまで放射線治療を続ければいいだろう」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、放射線を照射すると癌細胞だけではなく周囲の正常細胞も傷つけてしまいます。そのため照射量には制限があり、これ以上放射線治療を続けるにはリスクを伴います。やがて時間の経過と共に、再び癌は大きくなってくるものと思われますが、このまま経過観察とするか、次の一手を打つか、そのお話は次回にさせて頂きます。