扁平上皮癌②

前回は皮膚に発生した扁平上皮癌のお話をしましたが、今回は口腔内に発生した扁平上皮癌のお話です。

14歳のネコちゃんが口をクチャクチャしていたり、手でこすって気にしたりしているということで来院しました。口の中を見てみると、下の写真のように右口唇~口腔粘膜~歯肉にかけて、かなり腫れて固くなっていました。

肉眼的には腫瘍が強く疑われたため、その種類を特定するために全身麻酔下で生検を行ったところ、扁平上皮癌という診断でした。

口腔内の扁平上皮癌はかなり悪性度が高く、化学療法や放射線療法はほぼ効果がありません。効果的な治療法は手術による摘出ということになりますが、口の中という場所だけに、皮膚のように余裕を持って摘出するということが難しいです。手術を進めていくなら、まずCTを撮って癌がどれくらいの範囲で広がっているかと、遠隔転移が無いことを確認してからということになります。ただし、骨の大部分に癌細胞が入り込んでいるならば、顎の骨ごと摘出という大がかりな手術になってしまうため、現実的には手術までたどり着けない場合が多いです。

今回のネコちゃんは口腔内に癌が広範囲に広がっていたことと、肺に転移も見つかったため手術は適応外でした。点滴などの支持療法を行いましたが、診断後約1ヵ月半で亡くなってしまいました。

口腔内の扁平上皮癌は、特にネコちゃんで予後が悪く、1年生存率が10%以下と言われています。皮膚に発生した扁平上皮癌は完治できることが多いですが、口腔内に発生した扁平上皮癌はものすごく厄介というお話でした。