甲状腺機能低下症①

1年くらい前から毛が薄くなってきたという13歳の柴犬が来院しました。

確かに、皮膚が見えるくらいに体中の毛が薄くなっており、毛質も悪くなっています。ただし皮膚に赤みや湿疹は無く、痒みも目立たないとのことであり、調べてみても炎症細胞や病原体は見つかりませんでした。

このように、高齢のワンちゃんで痒みの無い脱毛という場合に、疑うべきはホルモン疾患です。年と共にホルモンバランスが崩れてくると、毛の生え変わる周期に乱れが生じ、毛が抜けても生えてこなくなるため、徐々に薄毛になっていきます。

具体的な病名としては、お腹の中にある副腎という臓器が過剰に働きすぎてしまう「副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)」や、甲状腺という頸部にある小さな臓器の働きが悪くなる「甲状腺機能低下症」などが代表的なホルモン疾患です。

クッシング症候群の場合には飲水量と尿量が増加する多飲多尿がみられることが多いですが、このワンちゃんは多飲多尿がみられなかったため、甲状腺機能低下症を疑って検査を進めていきました。

すると血液検査にて、T4という甲状腺ホルモンの値が低下しており、追加で行ったfT4という甲状腺ホルモンの値も同じように低下していました。T4の低下は甲状腺機能低下症だけでなく、他の病気によって起こることも多いですが、fT4も同時に低下しているとなると、甲状腺機能低下症の可能性がより高まります。

甲状腺機能低下症の治療方法は、体に不足している甲状腺ホルモンを補うという事になりますが、機能を失った甲状腺を元に戻すという事はできないため、内服の甲状腺ホルモン剤を投与するという事になります。このワンちゃんも検査結果を踏まえて、甲状腺機能低下症と仮診断して、「レベンタ」という動物用の甲状腺ホルモン剤を開始することになりました。

さて、治療経過については次回お話します。