膵外分泌不全

1ヵ月くらい前から下痢が始まり、体重が徐々に減ってきているという5歳のネコちゃんが来院しました。もともと4.8kgくらいあったそうですが、来院時は3.8kgであり、下痢も形がないくらいのものが続いているとのことでした。

基本的な血液検査やレントゲン検査、腹部の超音波検査などを行ってみましたが、検査上は大きな問題がなく、まず慢性腸炎を疑って腸内バイオームという良便がでやすいフードに変更してもらい様子を見ることにしました。

フードを変えてから便の状態は少し落ち着きましたが、体重はさらに減り続けて3ヶ月後には2.6kgとなりました。食欲はあるという事ですが、さすがに体重の減りが激しいために詳しく検査を行ったところ、腸内に大量の液体が貯まっており、腸の腫瘍なども疑って試験開腹を行う事になりました。

開腹してお腹の中を確認したところ、腸に目立った病変はありませんでしたが、小腸を3ヵ所採取して病理検査に提出しました。また臓器を1つ1つ確認していったところ、膵臓が肉眼で分からないくらい萎縮しているのが見つかりました。

小腸の病理検査の結果は軽度の腸炎という結果であり、今回の症状との関連はありませんでしたが、トリプシン様免疫反応物質という膵臓の酵素の値を測定したところ、3.2μg/kg(平均12~82μg/kg)とかなり低い値が出たため、「膵外分泌不全」という病気であると診断することができました。

膵外分泌不全とは、慢性膵炎などにより膵臓がダメージを受けたことにより、膵臓から腸へと分泌される消化酵素が減少してしまい、消化不良を引き起こし体重減少と下痢を呈する疾患です。残念ながらダメージを受けた膵臓を治すという事はできないため、膵臓から分泌されなくなった消化酵素を経口的に補って、体重減少や下痢をコントロールするというのが治療方針となります。

今回のネコちゃんは、最初パンクレアチンという消化酵素の薬を使いましたが、便の回数が多いのは変わらず、体重もなかなか増えませんでした。そのため酵素をリパクレオンというものに変更したところ、便が落ち着いて、体重も少しずつ増えるようになりました。リパクレオンにより食べ物が消化され、体に身に付けることができるようになったということです。

ネコちゃんに膵外分泌不全が発生するのは珍しいですが、同様に体重減少や下痢で悩んでいる方はご相談下さい。